APARAJITO

大河のうた

原題: APARAJITO
監督: サタジット・レイ
キャスト: ピナキ・セン・グプト/カヌ・バナージ
製作年: 1956年
製作国: インド
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『大河のうた』、これね、ガンジス河のそばへ行きますね、そのインドの風景の凄いこと。
みんなガンジス河に体入れて水浴びますね、そのあたりインドの信仰というものが見事に出て良かったですね。

で、この後が『大樹のうた』ですね。樹がだんだん、だんだん、大きな樹になってるところでオプーが大きくなったとこを表わします。
という訳で、この『大河のうた』、『大樹のうた』、だんだん、だんだん、オプーが大きくなっていくところ、やがてオプーが花嫁さんもらうあたりまでが凄いなあ、見事な映画でしたね。

で、この監督が日本に来た時に、私はサタジット・レイに、「あんたは凄い人ねえ」と言ったら、「いえ、淀川さん、私よりもっと凄い人がいます」って言うから、「誰ですか?」言うたら「Mr.KUROSAWA」と言いましたね。

黒沢さんに非常に尊敬心持ってましたね。この人はカルカッタの人ですから、僕はインドが大好きで、インドの舞踊が大好きですから、カルカッタのダンスの物まねしたんですね。
したら、「淀川さん、よく知ってますね、インドへいらっしゃい」なんて言ってたんです。

ところがこの人、七十六才で亡くなりました。このサタジット・レイはインド映画の中でもハイクラス、トップですね。世界的なトップですね。
そういう意味で、サタジット・レイは凄い監督ですね。

私は『大河のうた』でこの風格、サタジット・レイの風格に酔いましたね。いい監督だなあ、と思いました。
インドでこんな監督が生まれた、いうことは映画の歴史で本当に大きく、大きく残すべきことですね。
で、この人が黒沢明が大好きだ言うことと、それからこの人がカルカッタの生まれで、カルカッタのいろんな事勉強してることも教えてくれました。

けれども、日本に来た時に非常におとなしい人でした。大きな体で、黒沢さんそっくりの体でしたけど、静かな静かな人で、「淀川さん、淀川さん」言って、「歌舞伎、好きですよ」なんて言ってましたけれども、ちっとも威張ってなかったね。本当におとなしかったね。
そういうところに、この人の品格と同時に映画自身の、豊かな、豊かな品格も感じましたね。

【解説:淀川長治】