VARIETE

ヴァリエテ

原題: VARIETE
監督: E・A・デュポン
キャスト: エミール・ヤニングス
製作年: 1925年
製作国: ドイツ
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はい、ドイツ映画の『ヴァリエテ』、このお話しましょうね。

曲芸なんですね、サーカスなんですね。これはエミール・ヤニングス主役で、とっても凄い見事な映画だったですよ。
この映画で面白いのは貧乏な本当に、あんまり大好きじゃ無い旅まわりの芸人がいたんですね。サーカスが。ところが中々入らないの。客が少ないの、ブランコ乗りやっとってもね。「こら困ったな」、と言ったら一人宿無しの女が流れこんできたんですね。それ、リア・ド・プティと言うので、当時これで一躍有名になった女優ですけど、リア・ド・プティがやって来た。「何か使ってくれよ」これどうして使おうかと思って-、そうして使う事になった。そのリア・ド・プティが美人でも無く、不美人でも無く綺麗でも無く-汚くでも無くと言う女でね、ちょっと小太りの若い女でね。いかにも女の匂い持っているんですね。それにこのおっさん、サーカスの親方エミール・ヤニングスがだんだんだんだん参っていく話ですね。

参っていく、参っていく、だんだん参っていく。別にそのリア・ド・プティの女は誘惑する訳では無いんですけど、だんだん親方が参って行く所が怖かったねー。凄いんですね。で、このリア・ド・プティが決して粋にマリリン・モンローみたいにポーズ取らないで、ボソっとしとって非常にセックスアピールが有るんですね。いかにも女の匂いがするんですね。それでこのリア・ド・プティはアメリカに呼ばれて一躍有名なスターになりましたけれども、曲芸団はそういう意味で非常に面白くて。

『ヴァリエテ』が「あっ、曲芸団か」とわかって、この曲芸団はエミール・ヤニングスの代表的傑作。どういう所が代表傑作かと言いますと、どんな時にもそのエミール・ヤニングスのやぼったい態度が良いんですね。例えばお昼でも、ゆで卵が5つ位あったら、そのゆで卵を取って頭でポンポンと割って自分で食べるんです。頭でポンポンと割るんですね。何でも無いけどそういう所のやぼったさ、いかにも男のオヤジらしい所が良く出てエミール・ヤニングスが名優である事が良くわかったんですね。

このエミール・ヤニングスは『ヴァリエテ』もう代表的な作品です。で、リア・ド・プティがこれで成功した事も有名です。見事な映画でしたね。

【解説:淀川長治】