La passion de Jeanne d'Arc

裁かるジャンヌ

原題: La passion de Jeanne d'Arc
監督: カールドライヤー
キャスト: ルイーズ・ルネ・ファルコネッティ/ウジェーヌ・シルバン/アントナン・アルトー
製作年: 1928年
製作国: フランス

『裁かるるジャンヌ』 これも又、映画の勉強している人は、第1ページにトップに置く、問題作品ですね。
で、やっぱりこの『裁かるるジャンヌ』は、カールドライヤー、デンマークの監督ですね。
あの監督だから、普通の映画ではありませんね。

で、『裁かるるジャンヌ』は、ジャンヌ・ダルクが死刑になる前から映すんですね。
ただ普通の女の子なんですね。
それを、例えばその、夢見たからゆうのでね、ジャンヌ・ダルクが、色々色々と、戦争を指導しましたね。それを坊さん達が怒って、これは神がかりな、もう気が違った女だから、そういうわけで、この女を、ジャンヌ・ダルクを、火あぶりにしようと思ったんですね。

それで、説教するところから、始まるんですね。
ところが、このジャンヌ・ダルクはあんな映画に出てくるような、小説に出てくるような、英雄じゃないんですね。本当の少女なんですね。
だから、「お前を火あぶりの刑にする」 言うたら泣きだしたんですね。
怖い、怖い、怖い、怖い、そっから始まるんですね。面白い、面白い、ジャンヌ・ダルクですね。

そうして、この女の子に、いよいよ、その日が来たんですね。
そっからが怖いね。やっぱりこの監督のカール・ドライヤーの感覚ですね。女の子が泣くんですね。
「イヤだ!!イヤだ!!」 それをみんなで、お説教して
そうして頭の毛を刈るんですね。
その刈る所が凄いね。あの、ハサミで頭の毛を、どんどん切っていくんですね。 火あぶりにする時は、頭の毛を切っちゃうんですね。

そうして、女の膝の所に、布をあててるから、その白い布に、パサパサパサパサ、パサパサパサパサ、毛が落ちるんですね。それを映すんですね。
そこら観ていて、怖いな~。観ていて可哀想だな~。と思いますね。
で、頭タコ坊主になっちゃってるんですね。で、ジャンヌ・ダルク泣いてるんですね。
それを又、みんなでお坊さんがお教を言って、いよいよ、その死刑台連れて行くんですね。怖いな~。
それで石があって、材木があって、その上に十字架みたいのが、あるんですね。そこへ縛られるんですね。

ジャンヌ・ダルクは、泣いてるんですね。
「神様!! 神様!! 神様!!!」 言うてるんですね。
その足下から火を点けるんですね。 そこらあたり観てると、こっちが呼吸、止まるぐらいに、怖くなってくるんですね。
足下から、ズゥーーッと、煙が出てくるんですよ。煙ばっかり。じぃーっとしているんですけど、煙ばっかり。やがてメラメラメラメラ火が、出てくるんですね。そのあたりから怖くなりますね。
ジャンヌ・ダルクが、だんだん、だんだん、足下から焼かれ、焼かれ出してくる。
ジャンヌ・ダルクが、もう本当に失神するんですね。そこで、アー!! っと言って。

そういう映画を何故? この監督作ったんだろう?
ジャンヌ・ダルクを本当に皆が、英雄! 神様! 戦の英雄!!
そういうふうに描いているけど、本当は、ジャンヌ・ダルクは、可哀想な、可哀想な、村の娘だったんだよ。
この火あぶり可哀想だろ? こんな火あぶり可哀想だろ?というのと同時に、焼かれる事の怖さですね。人間が。
こんな残酷な刑があるのか?もう足下から、ブゥワァァァーと火が上がってくる。ジャンヌ・ダルクがもう失神するね。

そういうあたりの怖さを、この監督は、どーいう訳か目に見えるように、本当に胸に迫るように描くんですね。
で、この監督の本当のこれが、やっぱり見事な映画作りの天才ですね。 見事なもんですね。

【解説:淀川長治】