散り行く花
  • 原題:BROKEN BLOSSOMS
  • 監督:D・W・グリフィス
  • 脚本:
  • キャスト:リリアン・ギッシュ/ドナルド・クリスプ/アーサー・ハワード/ノーマン・セルビー

  • 製作年:1919年
  • 製作国:アメリカ
  • D・W・グリフィス、ディビット・ワーク・グリフィス。アメリカの初期の有名な代表監督ですね。その監督の『散り行く花』、この話しましょうね。

    グリフィス、この人は『イントレランス』で一躍有名になりました。凄い、凄いセット、バビルの宮殿なんかもの凄かった。
    どうしてこんな凄い映画をつくったか言うと、イタリア映画の『カビリア』という映画を観てびっくり仰天して、それから二年目に『カビリア』に負けないようにというので、凄い、凄いバビルの大宮殿をつくり、そうして、もうこの人は一生払えないぐらいの借金を背負ったんですね。

    けれども、あんまり超大作をつくったから、他の会社が嫌がって使わなくなったらいけないので、今度つくったのが、本当のグリフィスらしい映画の『散り行く花』。
    今度は小品ですね、小さな作品ですね。けれどグリフィス一生の中で一番の見事な映画は『散り行く花』でしたね、リリアン・ギッシュ、リチャード・バーセルメス。

    ルーシーという、13歳の女の子がいたんですね。その女の子がお父さんに殴る、蹴られる。むちゃくちゃなお父さんですね、義理のお父さんですね。自分がつまんだ女が、外の男とできた子供を放り出していったんですね。
    しかたがないからその子供を、ルーシーと言う子供を、このお父っつぁんは犬猫の代わりに使ったんですね。

    そうしてお父っつぁんが、帰って来て「メシっ」と言うと、その13歳の女の子が慌てて飯つくつる。ところが怖いから、うつむいて、うつむいて飯出す、すると髪の毛引っぱって、笑え、笑え、Smile,smile,smile、と怒るんですね。そうして子供を殴るんですね、この子は、もういじけきってるんですね。

    そのルーシーと言う13歳の女の子が、チェンハンのストアの前でびっくりしたんですね。
    あんな奇麗な物が、あんまり立派な物が一体あるのかしらんと思って、毎日、毎日、マーケットへ買いに行く帰りにそれを見て、ウィンドウに顔突っ込んでたんですね。

    するとチェンハンが、今日もまた、水仙の花、水仙の精、それがやって来る、金髪の少女、青い目の少女、そうして、その水仙の精をじっと見るのが好きだったんですね。
    そのうちに、三日、四日、五日、六日、十日、だんだん、だんだん、親しくなって、おいで、おいでと言ったんですね。
    行ったらいけないんだけど、あんまり奇麗な物がある。しかもそのオルゴール、支那のオルゴール、チンコン、クリンコン、クリンコロン、クリンコン、サイレントだけどその音が感じるんですね。

    そうしてその子は中へ入って行ったの。したら、あれも見なさい、これも見なさい、そこで一晩過ごしたために、その親方が探して探して、とうとうルーシーを見つけて引きずって帰るとこあるんですね。
    その時にちょうどチェンハンは、ルーシーにおいしいもの食べさしてやろうと思って市場へ行ってたんですね。その留守に一人の男がやって来て、そのルーシーを引っぱって行くところが怖いんですなあ。

    もうルーシーは半分気絶してるんですね。それを引きずって、引きずって、お父っつぁんの前で「おったぞこいつ、この女」。で、お父っつぁんは鞭持って「このやろう、黄色と一緒になりやがって」、鞭でパーッと殴ったんですね。
    もう殺されると思ったから、この子はそばの大きな箱の中入って中からせん入れたんですね。
    お父っつぁんはヒステリーになって「鞭で開かなかったら、ここに斧があるぞ」って、台所から斧持って来てカーン、カーン、とやるのが、まるで音が聞こえるように怖いんですね。

    そして女の子は、中で体、顔中汗いっぱい、よだれが出る、鼻水が出る、震え上がっているうちにパーッと明るくなるんです。破れたんですね、ドアが。
    そうして、あーーーっと思ってると、お父っつぁんが首引きずってターッと出して、パーンと投げたんですね。
    ルーシーは死んじゃったんですね。さすがにびっくりしたんですね。

    その時、表からチェンハンがやって来て、パーン、パーン、二発でお父っつぁんを殺したんですね。
    そしてルーシーを抱いて、自分のチェンハンのストアへ連れて帰って奇麗に体拭いてやる。あたまといてやって、中国の服着せて、ろうそく立てて、線香たてて、「水仙の精よ、おまえだけをヨミの国へやらないよ、わしもおまえを守って付いて行く」、言ってベットの下から銃刀出してきて、カーッと突いて、パターッと倒れる。この後追い心中、凄かったですよ。

    【解説:淀川長治】