黄金狂時代
  • 原題:THE GOLD RUSH
  • 監督:チャールズ・チャップリン
  • 脚本:
  • キャスト:チャールズ・チャップリン/ジョージア・ヘイル

  • 製作年:1925年
  • 製作国:アメリカ
  • チャップリン最高の傑作『黄金狂時代』、このお話しましょうね。

    チャップリンの全部の映画の中で『黄金狂時代』は最高ですね。私はチャップリンの『黄金狂時代』を観た時に涙が出たと同時にぞっとしましたね。どんなぞっとしたか?みなさんお分かりでしょう?チャップリンはこの映画で靴を食べるんです。それで私はしまった、そうか、と思ったんですね。それはチャップリンがずっと長い間履いていた靴、あの靴を片足食べちゃうと言う事はこの映画でチャップリン時代は終わるんだと言う印だと思ったんですね。怖いなと思ったんですね。

    これでチャップリンはやめると言う風な暗号だと思ったんですね。だからびっくりした。

    けれどもこれは本当に見事でしたね。どんなに見事だったか言いますとチャップリンがダグラス・フェアバンクスジュニアの本当の親友だったんですね。それでクリスマスに遊びに行ったんですね。ダグラス・フェアバンクスの家に。そうして遊んで帰りにダグラス・フェアバンクスが「ちょっとこれ観ようか?チャップリン見ないか?」と言ってスライド見せたんですね。10枚の。それはアラスカの金鉱発見の実写なんですね。実写というか実際の写真なんですね。山へどんどん雪の山へ登って途中で倒れて死ぬような所もあるんですね。その登る人が、このゴールドラッシュに行く人が。それを見た帰りにチャップリンが凄いなと思って車に乗って家に帰る道で、ちょうどクリスマスだから蛍の光の歌、歌ってたんですね。その声を聞いて蛍の光とさっきのスライドで俺今度ああいう映画作ってやろう。ああいう映画作ってやろう、そうして作ったのが『黄金狂時代』でしたね。

    私はこれ観て凄いなと思った事はチャップリンのこの映画観てメロドラマをこんなにコメディで見せる人は初めてと思いましたね。人間劇ですね。自分の一緒に暮らしてる男をだんだんだんだんその片っぽが飢えて飢えて飢え切ったら本当に飢え切ったら相手を食いたくなってきたんですね。人間を。怖い怖いドラマですね。

    この映画の一番最初を観てやっぱりチャップリンだなと思ったんです。一番最初に映ったら雪景色ですね。雪の崖ですね、アラスカの。そこへチャップリンがひょこひょこ歩いて行くんですね。崖っぷちの端を。チャップリンがどんどんどんどん歩いて行くと後ろから大きな白クマがついていってるんです。熊が。白か、黒か忘れたけど。チャップリン知らないですね。後ろからついてくるんですね。チャップリン一噛みですね。チャップリン知らないで歌いながら歩いて行くんです。そし曲がり角曲がった時にその熊は反対側行っちゃったんですね。だから助かったんですね。でもチャップリンはそんな事知らないで行くんですね。そこに運命と言う物。人間と言う物は後ろに怖い物来とっても知らないで綺麗に行くという話もあるし、運命と言う物は怖いなと言う所から始まる所に『黄金狂時代』の、この人間ドラマのスタートからして怖いんですね。

    と言う訳で私は今、今日までの色んな色んな映画をずっと全部観て4歳から今日まで映画観て、私何本観たか分からないですね。一番の映画なんだと聞かれたら、『黄金狂時代』言いますね。

    【解説:淀川長治】