2018年7月、劇場公開

人間機械 MACHINES

厳しいハード現実コア、その響き―。

今日、著しい経済成長を遂げているインド。北西部グジャラート州にある巨大な繊維工場が本作の舞台である。工場内部に入っていくカメラが捉えるのは、劣悪な環境で働く労働者たちの姿。中には幼い子供もいる。あからさまな労働力の搾取。グローバル経済の下で歴然と進行する労使の不平等。出稼ぎ工場労働者が囚われる過酷な労働状況の告発を主題とする一方で、流麗なカメラワークによる画面はまるで宗教絵画のような「美しさ」を漂わせている。そして、画面を凌駕する圧倒的なまでの音響。作業機器から出る音の反復とその独特のうねりには、高揚感すら生まれるだろう。高精細・高解像度で記録され構築されたオーディオ・ビジュアルは、嗅覚や皮膚感覚まで刺激するかのように見る者の体感に訴える。1895年、リュミエール兄弟が『工場の出口』を発表して以来、映画は工場を捉えてきた。絶えず「労働」と「人間」を巡って来たともいえる映画の歴史に、本作はどのように位置づけられるのか?「記録」と「芸術」の境界を探求する、新鋭ラーフル・ジャイン監督による問題作。

新着情報

2019.5.13

Blu-ray&DVD発売決定!

2019年6月28日(金)、
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Blu-ray:定価¥4,800(税別)
DVD:定価¥3,800(税別)

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予告編

推薦コメント

監 督
ラーフル ジャイン Rahul Jain

監督兼プロデューサー。ニューデリーに生まれ、ヒマラヤで育つ。カルフォルニア芸術大学で映画とビデオを学び、美術学の学士号を取得。現在は美学・政治学の修士課程で学んでいる。本作はデビュー作になる。

まず、制作背景からお聞きします。インド・ドイツ・フィンランドの3カ国が製作国になっているのはなぜですか?

2015年の11月に、自分ひとりで撮った完成途中の作品を、インドのゴアで開かれた「フィルムバザール」に出品しました。そこにいたフィンランド人の審査員が作品を気にいって、プロデューサーになってくれたのです。また、ドイツの共同製作者が、サウンドとカラーリングのポストプロダクションの資金を工面してくれました。それが、インド・ドイツ・フィンランドの3カ国がクレジットされた理由です。

作品を観ると、画が緻密に構成されている印象を受けます。被写体である工場の労働者たちには、どのようなアプローチをしたのでしょうか?

特に被写体に要求したことはないですね。強いて言えば、彼らにカメラを意識させないことですか。撮影に入る2カ月前から、カメラを持たずに彼らとともに過ごすことで、彼らがカメラを意識して緊張しない環境を作りました。

音も非常に印象的でした。工場の規則的な音は、まるで労働者から生気を奪い取る麻薬のようにも感じられます。音に関して、監督が現場で感じたことはありますか?

彼らは、ヘッドフォンで音をブロックしています。しかし、工場から村に帰った労働者に話を聞くと、眠れない、機械の音が耳に付いて離れない、と言っていました。つまり、彼らの耳は完全に破壊されているのだろうと思います。私も3カ月も工場で過ごしていたら、完全に聴力が麻痺して、出血もあり、その後、二年間ほど大きな音の音楽は聴くことができませんでした。

監督は、作中で工場の経営者のひとりにインタビューを行っています。彼の労働者に対する意見は、インドの工場経営者の多くが持っている意見である、と考えて良いのでしょうか?

はい。あの地域に1300軒くらいの工場があります。映画に出てくる工場は、そのなかで一番よいと言われている工場で、あの状態です。他の工場がどんな状況かは、推して知るべしです。

映画の終盤のシーンで、労働者に囲まれ、お前は自分たちに何をしてくれるのか、と問い詰められるシーンがありました。監督は労働者に対してこの映画で何ができると考えていますか?

映画監督は、救世主のように思われているのでしょうか。ジャーナリストの仕事は、ある情報をAからBに伝える仕事だと皆さん知っている。なのに、映画監督は問題があれば、それに対する答えを知っている、と皆さん考えているみたいですね。この映画は、労働者階級のために作られた映画ではないです。彼らは映画を観る余裕さえないですからね。我々、中流・上流階級の人たちが、余裕のある人たちが考えて、それに従って行動を起こして行く。そのための映画だと思います。

最後に、デビュー作を完成させた感想をお願いしてもよろしいですか?

次作を作りたい。でも、そのことについてはナーバスになっています。映画を作るにはお金もかかりますからね。でも、この映画が成功したことによってできた土台をもとに、そのことを考えると夜も眠れなくなるほど、関心を持ってこだわっている、次の課題に切り込む映画を作りたい。次の作品は、ニューデリーの土地、水、空気の汚染の問題に取り組もうと思っています。

提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭

  • サンダンス映画祭
  • ワールドシネマドキュメンタリー 審査員特別賞
  • テッサロニキドキュメンタリー映画祭
  • ギリシア議会ヒューマンバリュー賞
  • Fipresci賞
  • 国際審査委員賞
  • チューリッヒ映画祭
  • ドキュメンタリー国際長編部門最優秀賞
  • ムンバイ映画祭
  • シルバー・ゲートウェイ賞
  • 英国ドキュメンタリー グリアソン賞
  • ドキュメンタリー国際長編部門最優秀賞
  • 監督・脚本:ラーフル・ジャイン
  • 撮影:ロドリゴ・トレホ・ビジャヌエバ
  • サウンドデザイン:スミト・“ボブ”・ナート
  • 録音:エイドリアン・バウマイスター
  • 編集:ヤエル・ビトン、ラーフル・ジャイン
  • 色調調整:グレゴア・ヒューラー
  • 製作:ラーフル・ジャイン  JANN PICTURES
    タナシス・カラタノス Pallas Film
    イーッカ・ヴェヘカラハティ IV FILMS LTD

  • 2016年/インド・ドイツ・フィンランド/DCP/カラー/71分

  • 日本語字幕:岡崎真紀子
  • 配給:株式会社アイ・ヴィー・シー/配給協力:ノーム
  • 宣伝:スリーピン

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